感想『『ブラックデビル』〜人類vs人間兵器〜』を読んで
題:『『ブラックデビル』〜人類vs人間兵器〜』
作者:ヒュンメン
注意書:この作品には 〔残酷描写〕 が含まれています。
読んでまず気付くのは、セリフを中心に読み進めるタイプの小説だということです。
物語の登場人物は生きているわけですから、一挙一動の表現も、しようと思えば可能です。
それを踏まえた上でセリフを中心に書かれた本作を読んだ感想を述べるとすると、『驚くほど読みやすいなコレ』です。
『読む側からしたら想像で補完できるな』とも思いました。
実際、キャラクターの外見について触れられているのは"個人の年齢からくる外見"みたいな部分だけです。
髭があるとか、老いているとか、女性だとか男性だとか持ち物はああだこうだだとか。
そうすることで読者が想像したキャラクターがセリフを読んでいる感覚になり、映像を見ているかのようにこの作品を読んでいて感じました。
挿絵のない小説だからこそできる、脳内補間のなせるワザだと思います。
小説というと、物語が活字で作られていますので難しく思う人もいるでしょう。
そんな中でも存在する"誰でも楽しめる小説"を体現したような作品、それが本作です。
足をすくわれたような感覚です、これなら文章が苦手な人にも読ませられますし、書く側としても負担が少なくて良いと感じました。
ついでに言わせていただくと、小説でのセリフが鍵かっこ(「」←これ)で囲まれるとき、大抵の小説では鍵かっこの最後の句点を省略します――
(例)
「こんにちは。私の名前はシンジです。」
↓
「こんにちは。私の名前はシンジです(ここの句点を省略!)」
――が、省略しないほうが正しい……というようなことがあるように、小説の叙述法に"こうでないと小説ではない"というルールはありません。
あくまで記述のルールは"読み手へのサービス"で、そういったサービスを提供する必要のない、個人でのWeb小説では記述のルールを守る必要はありません。
この作品はその"本来あった自由度を活用する"という点で上手に、分かりやすさを獲得しています。
本編の感想に戻りますと、この作品は、母親に捨てられ盗人として生きていた主人公バールの物語です。
彼の父親は国の軍人で、かつての戦いにおいて戦死してしまいました。
彼はその息子だからか、その戦いに関係した人や事件に巻き込まれてしまいます。
そんな主人公が盗みを働いていた時に出会ったのは一人の女性で、彼女は主人公バールに不思議なものを感じます。
その後バールの本名を聞いたことでバールが探していた人間だと気付いた女性は、バールを"兵士"として鍛えることにしました。
女性の名はディープ、彼女もかつての戦争の関係者で、バールの父とは……おっとっと、本編を要約したような事をつらつら述べても感想にはなりませんね。
しかし今ざっと言ったように、本作は王道なファンタジー作品。
ジャンルはアクションで、オリジナル戦記でもあり、現代の物語を扱ったものです。
主人公が修行を積んで力をつけ、自らに眠る能力を操り、物語を動かしていく。
その姿はさながら英雄、世界のを裏から操る黒幕に対して、主人公は真正面から挑んでいく。
そういった作品の一つです。こんな作品の主人公が格好良くない試しはありませんね。本作の主人公バールも例に洩れず格好良く描かれています。
頭脳派ではありませんが、素直に考え、物事をシンプルに捉える姿勢があります。
多くの人にとって感情移入のしやすい人物だと思います。
こういった点を含め、簡単に読める本作はなかなかに私好み、小さなスキマでも読めるので通知だけつけておき、空いた時間に読むというスタイルが楽しいのではと思いました。