感想『天界のすゝめ』を読んでの
題:『天界のすゝめ』
作者:清上 帥昭
冒頭に『死後の世界についてポップに描いた』とありましたが、間違いありません
相当な数の人を集めてレビューさせてもこれは"重い話ではない"と答えるでしょう。まずはこれだけ言いたかった。
肩の力を抜いて、ついでに凝り固まっていた固定観念やら先入観やらをほぐしてお読みください。
開いた口が塞がらなくなること請け合いです。
あらすじと常識にひと味ふた味と加えていったような作品を、どうぞお楽しみください。
ええどうぞ。遠慮なさらずに。
それでは本編についてですが、序章はまるまる一つを設定に充てられており続きへの布石となっています。
人によって定義の曖昧な"天界という世界"について、この作品なりの設定を解説しています。これをお話が始まる前に伝えた意図とは? と何やら気になりますね。
流れとしては"記録員"という存在について、天界についてを順に追って説明しています。
この段取りが無造作なようで上手でした。
冒頭から「そんなバカな」と言って笑い飛ばし読み飛ばしてしまうような部分ですが、この序章があるとないとでは別物ですね。
一章を読むうちに気付くことなので言いにくいのですが、言わせてください。
序章で浮かんでいく"天界"という世界観、その発想はどれか一部が"いずれ意味を持つもの"です。
それらは氷山の一角にすぎず、伏線とは別物の、物語が流れていく始まりそのものなのです。
さてどの表現が伸びていくのでしょう?
驚かされましたがこれ以上は言わずにおきましょう。
再び序章についてですが、物語に掲げられた"記録員"による解説のセリフと併せてナレーションが入ります。
果たしてこの記録員が"読者"に向けて声を届けているのかは分かりませんが、記録員のセリフは発言としての鍵カッコに囲まれていません。
作品の敷居を超えた、読者に問いかける言葉なのか。
あるいは誰か"天界へ来る人"に向けた言葉なのか? 気になりますね。
とまあ序章の話は置いておき、一章の話へ進みましょう。
序章ではふわふわとした世界観の要素が漂っていましたが……一章は毛色から違うようです。
不思議な始まりは序章と同じですが、新たに登場人物がいます。
"記録員"ではないようです。見るところ"学生"? でもなぜここに? 記録員とやらはどこへ?
なかなか読者を逸らせるのがお上手なようです。
私もここで手早く読み進めてしまいました。
大きな伏線と細かい伏線の回収がちらほらあったのですが、平坦に見える日常の風景に隠れていて、その先は序章からの関連が……というように繋がる糸がガシガシと現れます。
途中までの答え合わせ、といったところでしょうか。
序章に繋がりつつも二章に期待させる完成度、やはり毛色が違うと言って正解でした。
総合して整理しますと、単体では繋がらない序章、読むうちに繋がっていく一章、という部分までをまとめた作品になっています。
あるようでなかった"先の気になり方"をさせてくれる作品だと言えましょう。
今後にも期待させてもらいたいですね。
おわりに
『天界のすゝめ』、読ませて頂きました。
何かと深読みさせられた作品ではありましたがサクッと読めました。
かっちり組まれた伏線って読んでいて気持ちがいいですね。
こう、かちっとパズルが合うような快感があります。
やっぱり伏線のある物語はいいですね。
では、これからも感想書きとして成長してゆきます。どうもありがとうございました。